消えた未来

「そんな死人みたいな顔の人に、接客されたくないよ」

 私の言葉に答えたのは、目の前にいる男性ではなかった。

 横のほうから声がした気がして、首を動かす。

 ジュースを飲む男の子がいる。

 私はその顔を知っている。

「……士君?」
「驚いた。僕のこと、覚えてたんだ」

 士君は言いながら、ジュースを飲む。

「士君は、ここのお客さんだったの?」
「そうだよ」

 コップが空になり、士君は立ち上がる。

 私の目の前に立って、士君の身長に驚いた。

 前は私の胸あたりだったのに、今は視線が同じくらいだ。

「侑生が死んでつらいのはわかるけど、ここで働く気なら、その顔はどうにかして」

 士君はそう言うと、お金を払って帰っていった。

 士君の言う通りだ。

 義務で動いているから、こうなるのだろう。

 これは、私の願望だ。

「久我君が大切にしていた人の繋がりを、私も大切にしたいんです。お願いします。雇ってください」

 私は周りの目も気にせず、頭を下げた。

「君が、美和が言っていた侑生の好きな人? 名前はたしか……真央さん、だったかな」

 名前を言われて驚き顔を上げると、さっきの男性とは別に、もう一人の男の人が立っている。

 優しく微笑んでいるその表情は、見たことがあるような気がした。