消えた未来

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 気持ちというものは、思い通りにはならないものだ。

 久我君の葬式を終えて、部屋に引きこもる時間が長くなりつつあった。

 夜は眠れなくて、空が明るくなってから体力の限界がきて、寝落ちる。

 そんな日が続いた。

 だけど、誰も、なにも言ってこなかった。

 さすがにそんな生活をしている自分に嫌気がさして、重たい足を動かす。

 洗面所に行って鏡を見ると、死人のような顔が写っている。

 なにが“生きる”だ。

 かけ離れた姿になっているではないか。

 顔を洗ったところで、顔色の悪さは変わらない。

 化粧で誤魔化して、ようやくマシになる。

 部屋に戻り、着古したシャツとジーンズを着る。

 スマホと財布だけが入ったカバンを持ち、家を出る。

 外に出れば、世の中のスピードには置いていかれる。

 だけど、今はそれでよかった。

 私なりのペースで、目的地に向かう。

 お姉ちゃんと訪れた、久我君が働いていた喫茶店。

 扉を開くと、ドアベルが鳴る。

「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」

 男性店員に笑顔で出迎えられる。

「あの、バイトの募集ってしていますか」

 私が久我君の世界を守るためにできると思った一つが、久我君が大切にしていた繋がりを絶たせないことだと思った。