消えた未来

「はい、次」

 すると、お姉ちゃんはまたスマホを見せてきた。

 今度は別の動画みたいだ。

 もう少し今の動画の処理をする時間がほしいと思いながら、画面を見る。

 見えているのは、白い壁だろうか。

〈……いや違うな。やっぱり真央……これも無理だ……〉

 画面内に久我君はいないけど、声だけが聞こえてくる。

 これは、私の名前を呼ぶ練習だろうか。

〈私は呼び捨てでいいと思うなあ〉

 お姉ちゃんの声とともに、久我君が映った。

〈なっ……聞いてたのか〉
〈聞こえたの。朝の体調チェックするよ〉

 日常のやり取りのようだ。

 久我君の視線が若干上を向いているところからして、隠し撮りか。

 確認の意を込めてお姉ちゃんを見ると、いたずらがバレた子供のような顔をしている。

〈真央とはいい感じ?〉
〈その質問の仕方が嫌だな……でも、まあそうだな。もう彼女がいない日常には戻れないくらいだ。なにより、あのころと変わらない笑顔を見せてくれるのが、幸せで仕方ない〉

 久我君は柔らかい笑顔を浮かべる。

 こんなに堂々と惚気けていたなんて、知らなかった。

〈見せつけてくれるなあ。私にも、それくらい言ってくれる人がいたらいいのに〉
〈織部さんは仕事一筋って感じがする〉