消えた未来

「はじめまして、織部真央です。久我君とは高二のときに同じクラスで……あの……私も、久我君のこと、好きです」

 言って気付いた。

 私が今、ここで告白する必要はなかったのではないか。

 ただ久我君が満足そうにしているだけではないか。

 見えていないのに、自分の顔が赤くなっているのがわかる。

 高瀬先生と久我君のお母さんが、ぽかんとした顔で私を見てくる。

「……今日は帰ります」

 逃げ出したい気持ちそのままに踵を返したが、久我君に手首を掴まれてしまった。

「織部さん、明日も来る?」

 小さな子供が寂しいときにするような目に見える。

 捨てられた子犬と言ってもいいかもしれない。

「来てくれると嬉しい」

 久我君はわざわざ言い方を変えた。

 その言い方は、狡い。

「……わかった」

 もともと断る気はなかったけど、断りにくくて頷いたみたいになってしまった。

 そして私は、そのまま病室を出た。

 ドアを閉め、背中を預ける。

 小さく深呼吸をし、さっきの久我君の話を思い出す。

『好きだよ』

 久我君のしっかりとした声が、脳内再生される。

「そんなところでなにしてるの、真央」

 手のひらで顔の温度を下げていたら、呆れた声がした。

 顔を上げると、声通りの顔をした星那がいる。