消えた未来

 なにより、私が久我君の生きる理由になっていることが、一番嬉しかった。

「蘭子ちゃん、侑生はどこ?」

 病室のドアが見えてきたとき、慌てた声が聞こえてきた。

「落ち着いて、美和さん。すぐ戻ってくるから」

 高瀬先生の声だ。

 それを聞いて、早く久我君を病室に連れていかなければと思った。

「織部さんのせいじゃないから、できれば慌てないでくれると助かる。急に押されると、びっくりするし」

 久我君に止められて、私は手から力を抜いた。

「今、久我君を探してるのって、もしかして」
「俺の母さん。入院が長引くことが増えてきて、ちょっと不安定なんだよ。まあ、さっき蘭子が言ってた通り、俺の顔が死んでたのも原因の一つだけど」

 久我君の話を聞いているうちに、ドアまで着いた。

 病室には、高瀬先生と、高瀬先生に背中をさすられながら丸椅子に座る女性がいる。

 見るからに弱っているあの女性が、久我君のお母さん。

「母さん」

 久我君が声をかけると、久我君のお母さんは顔を上げた。

 不安一色だったのに、一気に安心した表情に変わった。

 それからすぐに、久我君のもとに駆け寄り、目の前で膝をついた。

 言いたいことはたくさんあるだろうに、久我君の手を握って、静かに顔を伏せた。