消えた未来

「……私、今ようやく、久我君が病気なんだって、実感してるというか……」
「なるほど。死にゆく人間と恋愛はしないってか」
「違う」

 久我君の皮肉的な言葉を、すぐに否定する。

 そういうつもりで言っていないけど、そう受け取ることもできると思った。

「……私、久我君の気持ち、全然わかってなかった。ただ傷付けられたこと、急にいなくなった事実に囚われて、どうして久我君がそうしたのか、考えようともしなかった。久我君の病気のこと、わかってるようでわかってなかったんだって気付いて……こんな私、久我君に相応しくない」

 話しながら、言い訳に感じた。

 これで説明できているのかも、わからない。

 なにより、見切り発車だったから、自分でなにを言おうとしているのか迷い始めている。

「それに、人間はみんな死んでいくわけで……」

 それを言うと、久我君は吹き出した。

「なるほど、みんな死にゆく人に恋してるわけだ」

 極端な話、そうなるかと。

「てことは、織部さんも俺と同じ気持ちってことでいい?」

 また頷こうとしたけど、久我君には見えていないことを思い出した。

「……うん」

 すると、久我君は両手で顔を覆った。

「今、人生で一番幸せだわ。俺、絶対まだ生きる」

 その言葉がどれほど嬉しいか、きっと久我君にはわからないだろう。