(ユキside) ――――あの日、僕が春香に出会った日のこと。 あまりに寒い一日だった。 両手をさすりながら大通りを歩けば、 其処彼処から今日は夜更けから雪が降るという声が聞こえる。 そして立ち止まり、自分の着ているジャケットを見て溜息を吐いた。 これも冬用だけど、この寒さを乗り切るには少し薄い気がする。 「……上着、取りに行かないと」 あの家に戻らなければならない。そう考えるだけで、ズシッと心が重くなる。 寒い、さむい。だけど、僕の寒さは違う。