────数年後。 もう、あれから何度冬を越えたんだろう。 トーストを齧り、コーヒーを飲みながらニュースを見つめる。 でも、あの出来事があったから、約束があるから、一人で過ごすことを寂しいとは思わなくなった。 「今日は休みだから、家の中を掃除して……」 朝食を終え、椅子から立ち上がる。 すると、ピンポーンとインターホンが鳴った。 同時に届いたスマホのメッセージを見て、私は目を見開き玄関へと駆け出す。 勢いよく開いた扉の向こうから、春の香りが部屋に滑り込んできた。