突然色のない低音が、ユキのお母さんの声をかき消した。 驚いて振り返ると、そこには門の中から私達をじっと見つめるユキの姿があった。 「……ユキ」 「春香、帰ろ」 「待って、でも」 「いいから」 ユキは私の二の腕を掴み、お母さんの横をなにも言わずにすり抜ける。立ち止まろうとするも、いつもより強引なユキに阻止される。 だんだん遠くなっていくユキのお母さんの後ろ姿。彼女は、一度もこちらを振り返らなかった。