イヅナは申し訳なさそうに頭を下げ、ギルベルトはそんな姿が可愛らしく見え、そっと頭を撫でる。

「気にしないで、ありがとう。報告書はまた目を通しておくよ」

「ありがとうございます」

いつもならここでお別れだ。イヅナはギルベルトの部下ではないため、任務の報告以外ではあまり関わりがない。イヅナに特別な感情を抱いているギルベルトは、それが寂しいのだ。

ツヤから「妖を倒すのが可哀想だと言った女がいた」と聞かされた時、またかとギルベルトは思った。アレス騎士団として活動し、妖を一般人の前で倒すとそんな言葉をかけられるのも少なくない。

だが、そういう人たちは口だけはそう言うものの、アレス騎士団に入って世界を変えようと行動はしない。しかし、イヅナはアレス騎士団の入団試験を受け、騎士団の一員となったのだ。その覚悟と優しさにギルベルトは惹かれている。

(だから、俺の部下にしたかったんだけど……)

イヅナは戦うことを選んだ。そのため、想い人とギルベルトはなかなか関われない。今日も頭を下げ、去っていこうとする。その手をギルベルトは素早く掴んでいた。