肉が引き裂かれていく。血管がブチブチと音を立てて千切れ、失った右目の部分から血が流れ、激痛が走る。千切れた左腕が地面に落ち、ゴトンと音がした。

冷たい地面に体が倒れる。俺の心は立て、戦え、まだ敵は動いている、そう叫んでいる。でも体は動かない。妖だったら、すぐに怪我を治して立ち上がれる。でも人は脆い。少し傷付けば、すぐに動けなくなる。

敵が動き回る気配がする。立たなければ。死にたくない。生きたい。そう思うのに、体は全く動かせない。

敵が俺の血のついた腕を振り上げる。ああ、ここで俺は死ぬんだ。短い人生だったな……。

意識を失う直前、誰かが駆けてくる音がした。



「ーーーさん!ギルベルトさん!」

ギルベルトが目を覚ますと、イヅナが心配そうに覗き込んでいる。あまりに近い距離に、ギルベルトの顔が一瞬で赤く染まった。

「うわっ!」

ギルベルトがベッドから飛び起きると、イヅナが「お、驚かせてしまってすみません!」と謝る。その手には報告書があった。

「任務の報告書をお持ちしたのですが、お休みになられていて……。ですが、うなされていたようなので起こしてしまいました」