「あたし、恋という感情がどんなものなのか、ずっと知りたかったんだ……」

ツヤが顔を上げてそう言うと、レオナードが「なら俺と恋しましょう!」と手を挙げてツヤに抱き着こうとする。それを「やめろ」とヴィンセントが羽交い締めにして止め、部屋から引きずり出した。

イヅナの胸はギュッと締め付けられていた。ツヤやあの巨人のように、多くの人が妖にされているのかもしれない。その人を救える薬が作れたなら、もう悲劇は起こらない。

イヅナの頭にニコラス・フェリアーの姿が浮かぶ。人狼だった彼も、何者かに人狼にされたのだろうか。

「治療薬を作れれば、多くの妖を救えるね」

エイモンが微笑みながら言い、イヅナはゆっくりと頷く。可能性ができたことがただ嬉しいのだ。胸が温かくなっていく。

「でも、ツヤが人間になったら相手を尻に敷きそうだよね。怖い奥さんになりそ〜」

「何だとこら!!」

煽ったギルベルトをツヤが睨み、狭い室内だというのに殴り合いを始めようとする。それをチェルシーが間に入って止めたものの、お互いに悪口を言い合っていた。

「……フフッ」

数十秒前まであった重い空気はなくなり、イヅナは笑う。そんなイヅナを、ヴィンセントとギルベルトがジッと見つめていた。