「結界が破れると、先程のように巨人などの妖がうじゃうじゃやって来る。それが面倒なんだ」

キクがそう言い、同意するようにユージーンとイーサ、そしてフェイが頷く。ギルダは申し訳なさそうな顔をしていた。

「ここがムエルト村だ」

レイチェルが立ち止まった先には、東洋や西洋、様々な国の家が立ち並んだ不思議な光景が広がっている。家の数は多く、一つの町と言ってもいいかもしれない。

風車がくるくると回り、作物を育てるための広々とした畑や子どものための遊び場、さらには学校や診療所まで用意されている。

「すごい……」

イヅナたちの口からは、その言葉しか出てこなかった。普段は滅多なことでは驚かないツヤまで興味深そうにムエルト村を見ている。

「捕らえたお前たちの部下たちは全員、私の家の地下室にいる。今から解放するつもりだが、今日はもう遅い。山を降っている途中で夜になるだろう。……この村に泊まっていけ」