雨音がさらに激しくなる。男性は立ち上がり、部屋の隅に向かって歩く。そこにはコルクボードがかけられており、たくさんの人の写真や絵があった。多くの写真や絵にバツ印がつけられており、その中の一枚にニコラスも入っている。

「……今さら失敗作のことなどどうでもいいんだが……」

男性が冷たい声でそう言うと、「死んだらしいよ、No.1945。殺されたんだって」と青年は明るい声で言う。青年の言葉に男性は少し驚き、振り返った。

「妖がどうしてこんなにも凶暴になっているのか、未だに真実が掴めていないマヌケなアレス騎士団によってね」

青年はそれを嬉しそうに報告すると、「またねッ!」と手を振って地下室を後にする。ドアが閉まった後、男性はまたコルクボードに目を向けた。そして、バツ印が付いていない絵を二枚撫でる。

一枚目は白い髪を綺麗に纏め、花の髪飾りをつけて豪華な着物を着た女性の絵だ。女性の目は宝石を思わせる美しい赤である。

二枚目は黒く短く切り揃えられた髪をし、女性と同じ赤い瞳を持った女性のものだ。この絵の女性の方が若い。