イヅナとレオナードは山まで歩き、そこから舗装された山道を登っていく。手すりなどがあるため登りやすい。

山道を歩くと、東洋に多い瓦屋根の二階建ての家が見えてくる。ドアをノックし、イヅナとレオナードが「お邪魔します」と言いながら家の中に入ると、家の空気がいつもと違うことにすぐに気付く。

いつもより家の中の空気が張り付き、重い。玄関を見ればギルベルトの履いている大きな靴が置かれており、また喧嘩したのだろうかとイヅナは思いながらブーツを脱ぐ。

ツヤの家は、中に入る時に靴を脱いでスリッパに履き替えなくてはならない。イヅナは父が東洋人なのでそれほど戸惑いはなかったが、両親が西洋人であるレオナードとヴィンセントは最初のうちはなかなか慣れず、レオナードに至っては何度か土足で家の中に入り、ツヤに怒られていた。

「ツヤさん?」

イヅナがリビングのドアを開けると、そこには衝撃的な光景が広がっていた。

ツノを生やし、牙を剥き出しにしてツヤが怒りで体を震わせており、床にギルベルトとアリスが土下座をしている。そして何度も謝っていた。