ヴィンセントが隣国へ出発してから数時間、イヅナとレオナードはツヤの別宅があるギルベルトの屋敷に向かっていた。今日も稽古をつけてもらうためだ。

「今頃ヴィンセントの奴、あの清楚系美人と二人きりかぁ〜。俺、志願すればよかったかも」

悔しげにするレオナードにムッとし、イヅナは「レオナードなんかに警護は務まらないわよ」とわざと棘のある言い方をする。

「レオナードは、ヴィンセントみたいに色んな知識があるわけでもないし、そもそも警護をする理由が美人な女の人と一緒にいたいからでしょ?そんな人にギルベルトさんが頼むと思う?」

「お前、そこまで言わなくてもいいだろ!?傷付くぞ!」

泣き真似をするレオナードを冷たい目で見つめ、イヅナはギルベルトの屋敷の敷地内へ入る。この豪華な屋敷がようやく見慣れてきた。

敷地内にあると言っても、ギルベルトの屋敷からツヤの住む別宅までは距離がある。ツヤの家はギルベルトの敷地内にある山の中にひっそりとあるのだ。