カッキーン────

と気持ちの良い音が響いて、自然と動いた視線。

その先では野球部が練習中で……。


誰よりも笑顔を振りまく──君がいた。


同じクラスの辻堂(つじどう)くん。
いつも友達に囲まれて笑顔がいっぱい。その笑顔に釘づけになる。


辻堂くんの隣にいるのは、野球部のマネージャー──果穂(かほ)

肩上の長さで揃えられたボブカットを今は2つに結び、嬉しそうに顔を綻ばせながら辻堂くんにドリンクを手渡している。


そんな果穂を見て痛むのは私の心。


今までも、私の知らないところでああやって接していたのかな……。



好き──という自覚はなかった。

気がつけば辻堂くんを見ていて、気になる存在だった。


そのことを、中学からの友達の果穂に話していた。

相談……と言うには大げさで。
「辻堂くんが気になるんだよね」みたいな話を果穂にした。

果穂は「話しかけてみれば?」と笑って助言してくれた。


だけど、あの日──非常階段に逃げる前。

仲睦まじく手を繋いで歩く2人と出くわした。