階段を飛ばして駆け上がる。

たった1階なのに、遠い。……でも、足を動かせば踏み込める。別世界なんかじゃない。


4階に到達してすぐだった。

俺の視界に入ったのは、花森と、サリーちゃんの後ろ姿。


向かい合って何かを話している。


ハァ、ハァ……。

階段を駆け上がったから息切れやばい。


でも、整える時間も惜しい。


先に俺に気づいたのは、花森。

「あっ」と小さく声を漏らす。


それにつられて、サリーちゃんがこっちを見た。


「日南先輩……っ」


久しぶりに近くで見たサリーちゃんの顔が、気まずそうに歪む。

それでも俺は──顔が見れて、名前を呼んでくれて、嬉しい。


サリーちゃんの手を取って。


「花森。サリーちゃんもらうぞ」


「どうぞどうぞ」と言う花森の返答と同時に走り出す。