「通信機か」


暁はそれを2つ受け取ると、ひとつを私に渡した。


通信機、なのか。
それは確かにあったほうが便利だ。




「岳様のはこちらです」


紫乃は隣に座る岳にもしっかり渡す。
ずっと静かで寝ているのかと思ったけど、起きていたみたい。



「あぁ、そうだ。美鈴はこれも持ってなさい」


紫乃がもう一度振り向くとまたなにかを差し出して、私はそれを受け取った。
受け取ったものは、小さなスプレー缶。



「催涙スプレーよ。万が一の時のために護身用に持っていたほうがいいだろうから」


そう言われて、私はお礼を言ったあとありがたくショルダーバッグの中へとしまった。
このバッグも、借りているもの。