灯は雫に片想い中だ。四月の入学式で見かけた時に一目惚れし、その後すぐに告白するも振られてしまった。しかし諦めきれず、十一月が近付いてもアタックをしては振られるを繰り返している。

「いい加減、諦めたらどうですか?全性愛者さん」

横から視線を感じ、灯はゆっくりと顔をそちらに向ける。すると、艶やかな長い黒髪を揺らし、ぱっちりと開かれた大きな目、赤いグロスが塗られた唇、雪のように白い肌が目の前に映る。

雫は美人と言われる側の人間だ。そんな目で見つめられ、小悪魔のような笑みを浮かべられると、灯の中の恋がまた育っていくのだ。

「絶対無理!諦められない。三島さんが無性愛者だってわかってもね」

そういうわけでお昼一緒に食べない?そう灯は誘ったのだが、雫は考える素振りも見せずに「無理です」と言った。



灯は昔から恋多き人間だった。

初恋は五歳の時、相手は同じ保育園に通っていた女の子だった。その次に人を好きになったのは、小学校二年生の頃。今度は、習っていたスイミングスクールに通っている年上の男の子だった。