溺れてしまう。

友達だと、思ってたはず、なのに、それなのに。



気持ちいい、やめてほしくない、一瞬でも離れる柔らかな唇が、寂しい。

良くないことだと、頭の端では思っているのに。



鞠と緑になんて言えないことをしている罪悪感の裏側で、優越感と幸福感が押し寄せてくる。

いやだ、苦しい、怖い、それなのに──このまま溺れてしまいたい。



「ねぇ、知ってる?」



柔らかな口調で囁かれる声。

ぼぅっと揺れる視界の先で、綺麗に手入れのされた唇が艶めかしく動く。



「酒は本来の自分を暴くの。自分の欲が暴かれてるの」



ぼぅっと、働かない頭の奥に響いてくる、声。

酒……あば、かれてる?



「だからこれは、のどかの本当の欲望、だね」

「……よく、ぼ……?」

「ん、和香は俺の事、どうしたいと思ってんの?」



酷く眠い頭の中、アルコールが変に回ってきて、眠気を誘われている事を理解する。

いつもなら、寝ないけどたぶん──あのキスのせい、だ。



変な酔い方、した、し。

気持ち、良くて……。



ふわりと浮かされた感覚に一瞬目が覚めるけれど、ふかふかとしたお布団の中に入れられる感覚で、迷いなく私の大好きな世界に誘われる。








「かわい。おやすみ和香、また宅飲み付き合ってね」



その言葉を最後に聴いて意識は深く深く落ちていった。