その手首を掴んで離そうとするも、すでに上がっていた息が苦しくなる方が先で、酸素を求めてしまう。

開いてしまうしかない唇を覆い込むように重ねられる唇、躊躇なんてなく侵入される舌先が、強引なのに、優しく絡まる。



溺れる、溺れてしまう。

ガタッと聴こえる机の音、佐藤の視線が一瞬下を見てから、小さな机が横に避けられる。

かろうじてあった距離を詰められると、首の後ろをその綺麗な指先が髪を絡めながら支えた。



ようやく離れたかと思ったその唇を、整わない呼吸のまま見つめる。



「のどか、まだ飲み足りないでしょう?」

「……は」



いつの間にか、その手に持っていた缶を佐藤が口に含む。

まって、それ、私が飲んでいた桃サワー──!!



そのピンク色の缶を認識した直後には、再び重ねられたそこから、シュワシュワとした液体が流れ込んで来ていた。

甘い香りを纏って弾ける、紛れもなく佐藤が口に含んでいた桃サワーが、私の喉を通っていく。



もう、やってることがめちゃくちゃだ、こいつ。

炭酸に反応してツンと痛む鼻のせいで涙まで出てくるし、目の端にキスを落としてからまた流し込まれる、桃サワー。

私も、もうめちゃくちゃだ。