『なに』

『あーしの秘密も、和香なら受け入れてくれんのかな』

『秘密?』



それは、心の準備なんて時間を挟む間もなく。



『あーし、男なんだよねぇ』

『は……?』



全く理解も何も出来ない頭で、鼓膜だけがその音を拾っていた。

するりと私の額を撫でる手が、前髪を横に流す。

むちゅっと、額に唇の当たる感覚があってもまだ、その言葉を信じることなんて、出来なくて。



『のどか』



やけに低くなったその声が、目の前にいた『佐藤蜜』だった人間を、そう認識させないようにと働きかけてくるから、佐藤の胸元に手を当てて引きはがすように押した。



『……む、胸』

『あぁ、これパット。外したらぺっちゃんこ。もう貧乳通り越して胸なんてないよぉ』

『……し、信じられるわけ……だって一年の頃からの付き合いなのに、なんで今更……』



本気か?冗談か?からかわれているのか?

じゃあこの低い声は?

この肩に回ってる力強い腕は?筋肉は?

男にしては細身の肩は……?



『やっぱり』



佐藤は私の頭に手を乗せて、呟く。



『和香はこんな突飛な話でも、一生懸命、考えてくれんだね』