「その顔でそれ聞かれるのも違和感すごいな」



ドライヤーを手渡す時に、男の顔をした佐藤に頬をふにふにとつつかれる。

なにすんの。

というか佐藤、この短時間で化粧まで落としているじゃないか。

化粧落とし持ち歩いてんのか。



「あー付けてないな、まったく」

「若いからまだいける」

「乾燥は美容の大敵なんですー」



そう言うと、ベッド近くに持ってきていたらしい自分のポーチから化粧水と乳液と美容液まで取り出すから、女子力が私より遥か上であることにショックを受けた。

なるほど、可愛い女子……いや、男であっても、美容にこんなにも気遣っているから肌がきれいなのかもしれない。



コットンに染み込められた化粧水をトントンと肌に優しく乗せられること数分、美容液まできっちり塗り終えられた私の肌は、ぷにぷにもちもち肌へと化していた。

そうかこれが女子の肌。



「なんで女子より女子に詳しいのか」

「普段から気遣ってるからに決まってんでしょー」



そう言ってドライヤーをコンセントに刺した佐藤は、私を自分の座るベッドの下に座らせる。

ドライヤーの音で聞こえにくいけれど、柔らかく動くその手を、誰よりも優しいものに感じた。