「はぁ……俺の和香の香り」

「こんなところで嗅ぐな変態っ」

「外じゃなきゃいいってこと?」

「どうしたらそう聴こえるの、違くてっ」



かと思ったら、急にがばっと体を起こした氷が、肩を掴んで私の眼を真っ直ぐと見つめる。

今度はなんだ、忙しいな。



「それって和香も俺のこと好きってこと?」

「……っ」



どうやら私は、なにか口を滑らせてしまったらしい。
なんて言ったっけ私……。

『私も、ほしい』

氷が……と、そんなことを口走っていたことを思い出して、むくむくと顔に熱が集まってくるのを感じる。
夕焼けのせい、夕焼けのせいだ。



「……ばか」

「和香?もっかい」

「は?…………ばか」

「違う、そっちじゃなくて!!和香の気持ち、もっかい聞きたい」



がっしりと肩を掴まれたまま、そんなことを要求される。

もっかいって……氷がほしいって、それを言えってこと?

ここで?また?



「……っ、おしまい!今日はもうおしまいにするっ」

「なんで!?もっとイチャイチャしようよ!?」



ムリムリムリムリ、と私は首を横に振る。

この男と自分を向き合わせるというだけでも、相当な決意が必要だった。