「女だからって可愛がられてるわけじゃなかった」



佐藤はそう言って空を見上げる。

その表情はまた、感情を映さないものだった。



「うちの親は男女で差別するような奴らじゃなくて。蜜が人の内側に入り込むのが、特別上手いだけだったんだ」

「……信頼されやすい、とか?」

「いや、人を操るのがめちゃくちゃ上手い」



操るのが上手い、とは……??

あの可愛い蜜ちゃんからは想像も出来ない言葉に、私は聞き間違いかと疑う。



「蜜は……親もそうだけど、俺とか、先生とか、友達にも取り入ることが上手くて……手のひらで転がしてるようで、でも誠実だった」

「……ギリ悪女じゃない」

「そ。すげぇ計算高かっただけで、人を見る目があって、自分の理想に促すように取り入って、それを裏切ることもなかった」

「……あれ、じゃあ友達たくさんいたんじゃないの?」



それが本当なら、彼女にはたくさんの友達がいたはずじゃないか。

例え学校に通えなくなっていた期間が長かったにしても、わざわざ佐藤が友達を作ってあげるような理由は……。



「違うんだよ、広く取り入りすぎてた」

「どういうこと?」