「ところでさ」
カラオケの個室に入って座る緑が、デンモクを用意している佐藤に問いかける。
「アンタ蜜って名前でしょう?蜜くん?」
「いや、蜜は妹の名前」
まさかなんの躊躇いもなく話すなんて私も思っていなくて、ドリンクバーで入れて来たカルピスでむせてしまった。
鞠と緑はしばらく放心してから、「え、じゃあアンタ誰」なんて聞いている。
私の時は、理事長の「ひょ」だったなぁなんて思い出しながら、その光景を見ていた。
「佐藤氷、男。妹がひとり、彼女はいません。よろしく!!」
「ひょう……くん?いや彼女のくだりは見てりゃわかるけど……」
「わぁ……さとちんの本名初めて聞いたぁ」
「今初めて言ったからね!!」
鞠はさておき、緑は机に頬杖をついて少し考え込むと、私に視線を向けてからそれを佐藤に移した。
「なんで今まで黙ってて、このタイミングで暴露してきたのか。あとなぜ妹の名前を名乗っていたのか。なぜ和香だけ先に知らされていたのか。この辺りを詳しく話してもらいましょうか?」
ニヤリと笑って佐藤を捕らえる視線に、さすがの佐藤も一歩足を引いてたじろいでいた。
「ゴメンナサイ、話します」



