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「なに、千広さんの話を詳しく聞きたい……?」


ドライヤーで髪を乾かしてシャワー室を出ると、部屋に千広くんはいなかった。


元々、今日は大事な予定があったのだとか。

それなのに、わたしが脱走していないか、確かめるためだけに、短い空き時間でわざわざ黒帝に戻ってきたのだという。


明らかに時間の使いどころを間違えていると思うんだけど
わたし、そんなに信用ないのかな……。



「てか。さっきまで授業出たいんだもん!って言ってたくせに何なんですか」

「だって、この短いスカートで教室に行く度胸はないというか……」


見張り役として嫌々一緒にいてくれる開吏くんに、せっかくだし現在の千広くんのことを教えてもらおうとしたのだけど、さっきから睨まれるばかり。


「ほら、千広くんたちの世代は天才が集まってる、異端児とか言ってたでしょ。千広くんは何の天才なのかなあ〜とか」


「千広さんは天才なんかじゃないですよ。そんなんで収まる人間じゃないです。千広さんは……言うなら、権力、そのもの?」