やっとのことで一歩退いたわたしに、千広くんはきょとんとした顔を向けた。
「なんだよ、どうせ制服着てんだからいいだろ」
「そういう問題じゃないんだし……っ。ていうかわたし、扉越しにスカートの長さの話してただけじゃん。ブラウス着てないかもしれないじゃん、あんな、す、透け透けの下着みられたら……っ」
焦りで文脈がおかしくなっていくわたしの傍らで、千広くんの顔が、どうしてか赤く染まった。
「そ……んなの見ても、俺はどうにも、」
「千広くんがなんとも思わないとかじゃなくてわたしがだめなんだよ……っ。だいたいお風呂場ってプライベートな場所なのに、千広くんのばかたれっ」
胸板をぐいぐい押して、相手を脱衣所の外へと促した。
「おかしいだろ、お前が呼んだから来たのに」
素直に後退しながらも、不服な声を出す千広くん。