「ねえねえ、自己紹介のとき上手く聞き取れなかったんだけど、下の名前、あや……ちゃんで合ってる?」



お昼休みに入ると、斜め前の席の女の子が身を乗り出しながら聞いてきた。


「あ……えっと、あやる、です」

「あやるちゃん!? すごい可愛いっ!」

「あ、ありがとう……」


あまりにきらきら笑顔を向けられて、どんよりとしていた気持ちがほんの少しだけ晴れた。



「月ちゃんー、早く売店行こー」


教室の前方からその子に声がかかる。

ルナちゃんと呼ばれたその子は「先行っててー!」と返事をして、わたしに向き直る。



「私も2年生になって赤帝に転校してきたんだよ、一緒だね」

「そうなの?」

「月ちゃん、転校生独り占めしてずるーい。なんの話してんの?」


横から入ってきたのは、さっき扉近くでルナちゃんを売店に誘っていた子たちだ。