上下関係が異様に厳しく、昼夜問わず電話が鳴り、応答に少しでも遅れるとスマホ越しに怒鳴り声が聞こえてくるほどで、
当時はそばにいたわたしでさえも常にびくびくして過ごさなければいけなかった。
黒帝会を乗っ取りトップの権力を得るために、松葉家を『悪』だと大々的に主張し潰そうと本気で試みていた人。
おそらく大河くんも、この父親に洗脳されたのだと思う。
「ちょ……っと、待ってよ、お父さん」
「あーそれと。お前、明後日から赤帝高校に転入することになってるから、明日荷物全部まとめてこいよ」
「………は、……え? 何、言ってるの?」
言われたことは理解できる。
理解できるのに……。
心臓が痛いくらいに早鐘を打つ。
呼吸が浅くなる。
「冗談だよね? だ、って、転入なんてそんな即日できるわけないし……」
「悪い悪い、言ってなかったけど前々からこっちで手続き進めてたんだ。お前の担任にも話は通してあるから」
なに、それ。
そんなの、ひとことも聞いてない……っ。
「嫌だっ、絶対嫌! 赤帝には絶対行かない、ヒナタちゃんだって……友達だっているのに、」
「あのなあ。なにも県外に引っ越すって言ってるわけじゃねーんだから。その気になればいくらでも会える距離だろ」
そういう問題じゃない。
そういう問題じゃないのに……!



