「……まだ帝区にいたんだね、あんた。こんなとこ真っ先に出ていくタイプだと思ってた」
さっきとは違う……。
威圧も冷たさもない、普通の声。
強ばっていた体が少しだけほぐれる。
「わたしのこと、知ってるんですか? ……えっと、ちゃんと会話するのは初めてだよね」
「そっちこそ。おれのことなんで知ってんの?」
「……ち、千広くんが、よく絢人くんの話をしてたから、」
「おれもそーだよ、あんたの話をよく聞いてた」
不覚にも心臓が動く。
千広くんがわたしの話を?と、聞き返してしまいそうになる。
この人は敵、なのに。
力を弱めてくれたとはいえ、その手はしっかりわたしを拘束したままだ。
「千広君は元気?」
「……それってどういうつもりで聞いてるの?」
「どーいうつもりって?」
「だって、もうBLACKとは手を切ったんでしょ、しかも自分から」
「……たしかにそう、だね。野暮な質問だった」



