「え、なんで?」


なんで?
なんでって……。

そういえば──なんでだろう。


中学のときは、自分には大河くんがいるからと、好きな気持ちに見てみぬふりをした。

悟られないように必死だった。


でもあるとき、お父さんや大河くん含む親しい人たちに、千広くんの家だけでなく千広くん自身のことまでひどく貶されて──。

わたしは我慢できずに楯突いてしまい、結果、ひどい言葉と暴力で返り討ちにされた。


その出来事がトラウマなせいもあって、千広くんのことを考えるのを極力避けてきて。


でも今は大河くんとは別れているし、隠す必要は……ない。


そっか。
千広くんを好きでも、もう誰にも咎められることはないんだ。


どうせQUEENの役目が終わったら関わりもなくなってしまうんだから……。


「最後に伝えるだけ伝えてみようかな……」


付き合いたいとかおこがましいことは望んでない。
ただ、QUEENじゃなくなったあとに、あのとき伝えておけば……って後悔したくないから。


「よしきた! そうとなればヒナタ様に任せてっ、とっておきのテク伝授したげる!」

「ひえ〜心強い」


背中を押してくれてありがたいなあ、と思った矢先に、がしっと肩を掴まれた。


「まずはそのなっがい前髪切っちゃお!」