わたしより1つ下といえ、身の程を知れと言われたばかりなので、念のため苗字で呼ぶことにする。


「開吏でいいですよ、あと敬語じゃなくて大丈夫です」

「え、いやでも、ものすごく嫌そうな顔してるけど……ほんとに大丈夫?」


「嫌だけど、千広さんが大事にしろって言ったので大事にしますよ」

「はあ、どうも……。ありがとう、か、開吏くん」


最後の最後までジト目で見つめられて、苦笑いを返すしかなかった。



「じゃあ、安斉あやるサン、どーぞこっちに。中で幹部一同お待ちしておりました」


機械のような棒読みで案内をしてくれる開吏くん。

なかなか動かないわたしの背中を、千広くんがそっと押して先を促した。


20時27分。

───BLACK KINGDOMの領域に、初めて、足を踏み入れた瞬間だった。