──────
───
「……──」
ふわりと体の浮く感覚がして、深い眠りからゆっくりと引き戻される。
なんか今、声が聞こえたような……。
誰か近くにいる……?
開いたまぶたの先、見えるのは薄暗い空間。
まだ夢の中?
でも、あそこで薄く光るオレンジの灯りは見覚えがある、ような。
ぼうっと考える中で、ふと、ムスクの香りがほんのりと鼻をかすめて。
直後、意識がいっきに覚醒した。
「っ、千……」
反射的に声が出て、しまったと思う。
「……悪い。起こすつもりはなかった」
「……、……」
やっぱり千広くんだ。
目が闇に慣れないせいで輪郭は捉えられないけれど、間違いなく千広くん。
この浮遊感といい、自分の体勢といい……。
わたしは、抱えられて……いる。
「お前さ、ほんと」
低い声にびくっとした。
なんか……怒ってる?
「勝手にソファなんかで寝てんじゃねえよ」
「っ、ごめ、」
「いなくなったかと思って焦るだろ……」



