きっと疲れすぎて幻を見てるんだ、と瞬きしてみても目の前の景色が変わることはなく。
「………」
「………」
お風呂場で出くわすこの流れ、ついこの前も経験したような。
「千広くん、今日は戻らないんじゃ……」
「は?」
「えっ、だって絹くんにそう言われて……。千広くんは今日は戻らないから、わたしは千広くんの部屋で寝ていいって……」
「……あいつ」
千広くんが眉をひそめる。
「もしかして伝言の内容違ってた? ごめんっ、わたし出て行くよ」
「いい。ここにいろ」
「でも」
「そんな恰好で部屋の外うろつかれたら困る」
「っ……」
言われてみればその通り。
だけど、出て行くとなればちゃんと制服に着替え直すし……。
と、喉まで出かかったセリフは相手の圧によってなかったことにされた。
千広くんのいうことは絶対なのである。
「風呂入ってくる。お前はさっさと寝ろ」
優しいとも冷たいともつかない声を受け、ぎこちなくうなずく。



