関係ないわたしまでもが、その冷静さにはっとさせられた。
千広くんのことがここにいる誰よりも大人に見えたし、同時に恐ろしくも思えた。
“さすが松葉家の息子”。
……皮肉のきいたあの言葉が、よりにもよってここで頭をよぎる。
残忍な思考も躊躇いのない口ぶりも。
彼は松葉家の血を色濃く受け継いでいるんだと示唆しているようで、目を逸らしたくなった。
「……。千広、そいつの形、ちらっとでも見えたか?」
「いや」
「絹はどうだ」
「……おれもなーんにも見えなかったっすね〜。モニター室の映像チェックしてみたらどうです?」
シラを切り通すふたりに、周りは諦めたように去っていく。
やがてこの階の廊下からひと気がなくなったところで。
「なあんつって。相手は徹底的にうちのセキュリティ避けて侵入してたし、映像解析とかそもそも不可能なんだよな」
絹くんが、どこか楽しげに唇をぺろりと舐めた。
「千広君が“逃がす”なんて前代未聞すぎて、ついおれも話を合わせちゃったけど。千広君のトモダチ、なわけねえよな。……と、すると」
その視界に自分が収まった瞬間、どく、と心臓が嫌な音を立てた。



