「おーっと、なんだなんだ。修羅場か?」
唐突に笑い声が空気を裂いた。
面白がるように弾んだそれはあまりにも場違いだったけれど、おかげで大河くんの気が逸れて安堵する。
バルコニーからようやく戻ってきた絹くんからは微かに煙の匂いがした。
彼は上から下までじっくり大河くんを観察したのち、にやりと口角をあげる。
「この建物のセキュリティ突破できる人間そうそういねーのよ。すごいなあ、あんた」
「……お褒めに預かり光栄ですよ。伍ノ席、ACEの伊織絹くん」
あれ、知り合い……?
大河くんは中学卒業間近に帝区を離れたから、絹くんと面識はないはずだけど……。
「なるほど、おれたち幹部のことも調査済みなわけか。知っての通りうちは伝統を大事にする“素敵な”組織だからな~。反乱軍は間違いなく潰されるぜ?」
「忠告どうも。そんな口を叩いてられるのも今のうちだけど……ね」



