あと少しタイミングが違えば。
千広くんと出会ったのが、あと少し早かったら。
違う未来が待ってたかもしれない……なんて、今さら。
「ごめんなさい、大河くんとは付き合えないよ……好きな人がいる、から」
大河くんの胸板を押し返しながら、かろうじて声が出た。
ああ……。中学のときも、こういう風に言えればよかったのに。
ぽたり、もう何度目かわからない涙が落ちていく。
「──好きな人? まさか黒帝の幹部の誰かとは言わないよな」
「っ、」
「……は? おい、まさか──」
びく、と体が縮こまった。
千広くんへの気持ちは誰にも教えたことはない。
大河くんだけには、知られてはいけない。
痛いくらいに心臓が脈を打つ。
息もできないような嫌な空気の中、沈黙を破ったのは、わたしでも、大河くんでもなかった。
「……あやる、」



