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「あれ、もしかしてオレの顔覚えてない?」



大河くんの姿が瞳の中に飛び込んできた瞬間、記憶がものすごい勢いで巻き戻された。


覚えていないわけがない。

でも目の前にいるはずなのに、なんだか映像を見ているみたいで現実味がない。



「大河くん……、……なんでここに」



ようやく絞り出した自分の声すらどこか遠くで聞いている感覚だった。



「スマホに送ったの見てない? オレこっちに戻ってきたから会おうよって」

「あ……ごめん、電源切ってたから、」


「そっか。ま、こうやって会えたからいいや。元気してた?」

「……うん。そ、っちはどうですか」


「なんで敬語~? オレは安斉の元彼だよね」



人懐っこい口調はあの頃と変わらない。

クラスの女の子たちは、大河くんのことを「甘える猫みたいで可愛い」って言ってたっけ。


この人を可愛いなんて、わたしは一度も思ったことがない。



「いや、“元彼”じゃないな……。オレは別れること了承したつもりないから」



──この、人を刺すような鋭い瞳を、可愛いだなんて。