真っ暗な廊下で、黙って手を握ってくれた。
ぎゅう、と力強くてあったかくて、全身が心臓になったみたいで……。
一生教室にたどり着かなくてもいいのにな、と考えていたなんて、千広くんは知らないだろうな。
そのあと運悪くセキュリティ会社の見回りの人に見つかってしまって、見事、週明けに校長室に呼び出されたわけだけど……。
わたしにとっては大事な思い出。
やっぱり……好き、だな……。
思い出として美化されているだけの気持ちだったら、どんなによかっただろう。
「……千広くん」
「なんだ」
「千広くんて……昔も今も、……優しいよね」
「……そんなこと言うのお前しかいねーよ」
「優しいけど、ちょ、……ちょっと鈍いよね」
「はあ?」
わたしのこと緊張とは無縁だって言うけど、千広くんといるときはいつも心臓がばくばくいってるの、知らないでしょ。
「わ、わたしだって、緊張するときはするんだもん」
暗闇に手を伸ばす。
千広くんの指先を探して……、ぎゅっと握った。



