だから、どうして……。
ささいな変化に気づいてくれるの?
何年も前のことを覚えてるの?
そう、黒帝の中では明らかに真面目……というか目立たず隅に生きているわたしにも、中学のとき、校長室に呼び出されたという黒歴史エピソードが存在する。
あれは金曜日の夜だった。
課題に必要なテキストを一式忘れたことに気づいて、9時過ぎに学校へ取りに戻ったんだ。
もしかしたら遅くまで残っている先生がいるかもしれない……と思ったのだけど、案の上、職員室は真っ暗で、仕方なく帰路についたとき。
『……は、あやる? お前何してんの』
夜道でばったり、千広くんと会ったのである。
経緯を説明すると、千広くんはわたしを再び学校まで引っ張っていって
『ここ大抵いつも鍵かかってない』
と、校舎裏のとある窓をガラッと開けてみせた。
あのときのはじけるような高揚感は今でも鮮明に思い出せる。
ひとりなら、たとえその窓を見つけたとしても絶対入らなかった。
躊躇いもなく校舎に足を踏み入れたのは、ふたりでやれば怖くない、の精神……からではなく。
むしろ逆で、相手が千広くんだったからこそ、危ない橋を一緒に渡ってみたくなった、というのが正しい気がする。



