「──あやる」
車が停止して、シートベルトを外したタイミングで、ずっと口を閉していた千広くんから不意に声がかかった。
「制服だけだと寒いだろ」
「え……」
「会場まで少し歩くからこれ着てろ」
ふわりと肩にかけられたのは、千広くんのジャケット。
ほのかなムスクに包まれて、どき、とする。
……ほら、やっぱり優しい……。
鼓動の速さに比例して、頬がじんわりと熱を持つ。
そんなときだった。
ヴーッ、ヴーッと、ポケットの奥でスマホが音を立てたのは。
いけない。
夜会が始まる前に電源切っとかないと……。
取り出して、画面を見た
──────直後。
熱をもった体が、一瞬にして凍りついた。



