BLACK KINGDOM -夜明けまで、熱く愛して-


最後まで言えなかったのは口元を覆われたから。
隣から伸びてきた──千広くんの手によって。


「それ、あやるに対しての侮辱か?」

「そう聞こえたか?」


場の空気がいっきに不穏になる。圧迫されたみたいに息がしづらい。

わたしのせいだ、と思う。
QUEENに相応しくないわたしなんかが今ここにいるせい。
千広くんに庇ってもらう資格、ないのに。


「千広くん」

「なんだ」

「ハズレくじでごめんね、」


深く息を吐く気配がした。呆れたような、苛立ったような。


「もう聞き飽きた。……次はその唇塞ぐぞ」


距離を詰められ、目の前に影が落ちる。

避けなかった。

どうせ口だけの脅し。どうしたってこの人は──たとえ薬に侵されて理性が剥がれていたとしても、わたしの唇には決して触れてくれないんだから。


「………、」


案の定、重なることはなかった。

その代わりに、どうしてか、大きな手がわたしの両耳を塞いだ。


「──絹、」


微かな響きと、唇の動きと、視線で、絹くんに呼びかけたのはなんとなくわかり。

だけど、声を落としたのか、その先の言葉は読ませてくれなかった。