あっという間に目の前にきて、わたしをじっと見下ろす、黒帝のKING……。
伸びてきた手にびく、として一歩退いてしまった。
その反応にわずかに顔を歪めた千広くんの手は、結局わたしに触れることはなく。
あいだを流れる空気がずしりと重みを持つ。
その直後、
「千広君ー、安斉サン捕まったかぁ?」
なんとも気だるげな声が廊下の窓を抜けて、静まりかえった教室まで届いた。
しばらくして、扉からひょいと顔を覗かせたのは──紫ウルフの……
そう、BLACK KINGDOM幹部
伍ノ席・ACE……の、伊織 絹くん。
煙草の香り微かに漂った。
「んだよ、みんなしてそんな見つめちゃってー。照れるだろ」
彼がにやりと笑っただけで、なんということか、近くにいた女の子が、涙目で顔を真っ赤にしたまま膝から崩れ落ちてしまった。
そんな、わたしよりもはるかに動揺している女の子を目にしたおかげで少しだけ頭が働くようになった。
千広くんは “「かつてのクラスメイト」だったわたし”じゃなく、BLACKの“QUEEN”を迎えにきただけ。
私情に囚われてはいけない。
今はQUEENとして振る舞わなければ千広くんの顔に泥を塗ることになる。
ようやく冷静になって、今度はわたしから、千広くんの手を恐る恐るとった。



