──どう答えるのが正解なんだろう。
なんて迷ったのがいけなかった。
すぐ近くで響く声は麻薬みたいに、流れ込んできた途端に思考を鈍らせるから。
否定するタイミングを逃して妙な沈黙が生まれてしまう。
「っあ、いやあの……違う、くて」
慌てて発したところで、この沈黙の「妙」な部分を取り返すことは当然できず。
目に涙を溜めながら顔を真っ赤にして、これじゃあ、もう……肯定と捉えられてもおかしくない。
「前の男とこーいうこと、いっぱいやった?」
からかうような口調だった。
だけど、ひんやりとした鋭さも潜んでいる。
急に距離をとられたように感じた。
咄嗟に、相手の定めた距離感に従わなければ、と意識が働く。
千広くんが離れたぶんだけわたしも離れないと。
……傷つくのは自分だから。
「千広くんには………関係ない」



