__SIDE. 冽

.
.


「冽君おかえり」


部屋に戻ると、絹君と開吏が僕を待ちわびていたように勢いよく顔をあげた。


「千広君、体調どんなだった?」

「てかあの女まだ千広さんの部屋にいるんですか!?」


食い気味に尋ねてくる開吏をまあまあと落ち着かせながら、ふたりが座る向かいのソファに腰を下ろす。


「熱はこの前の怪我によるものだね。肋骨4本もイってるんだから、発熱はしばらく繰り返すと思う。全治まであと2ヶ月はかかるかなあ」



……そう。千広君は3週間前、赤帝のKINGとサシでやって、肋骨を4本もやられてる。

普通なら歩くだけで軋んで、とてつもない痛みになるはずなのに、千広君は苦痛の「く」の字も見せなかった。


軽い怪我なんかじゃない。血管にも損傷が入って、初めの頃は吐血を繰り返していた。

あれから時間は経っているとはいえ、痛みはまだ十分にあるはずなのに……つくづく化物かと思う。