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千広くんの部屋、とは?

……と思っていたけれど、家に帰るという意味じゃなく、黒帝の敷地内にある幹部それぞれの部屋のことだった。


縦並びの間取りになっている廊下の突き当り。

立派なもので、扉には黒字に金文字で『KING』と彫られている。


千広くんがカードをかざすと、重たそうな扉が音もなく開き。

「入れ」と視線で促され、操られるように従った。


「お前その格好で授業行ったの」

「……え」


背後で扉の閉まる気配がした。

周りから遮断された空間は嫌というほど静かで、ふたりきりだという状況を過剰に意識させてくる。



「その、ナカ見えそうな格好で出歩いたのかって聞いたんだよ」


な……に、いきなり。

べつに怒っているようには聞こえなかった。

でもわからない。千広くんは昔から、感情のこもらない喋り方をするのだ。


「うん……えっ、だってこれは、千広くんがわたしに無理やり着せた…から、」