びっくりして硬直しきってたはずなのに、千広くんに腕を引かれれば自然と足が動く。


どこ、行くんだろ、さっき「俺の部屋来るか?」って聞かれた気がするけど

ほ……本当に?


身の程知らずなわがままを言ったのに怒らないの?

それとも怒ったから、制裁を加えようと部屋に誘ったの?


バクン、バクン。

緊張と戸惑いで目眩さえした。



「ちょ……っと待ってくださいよ千広さん本気ですか!? いくら中学同じクラスだったからって、」

「開吏クン、しーっ。KINGの行動に、口出しは厳禁だよ」



開吏くんをたしなめたあと、冽くんは「あ、そうだ」と何か思い出したようにこちらを見て。



「はい千広クン。これ頼まれてた薬。2錠飲んでね。丹精込めてつくったんだ、“傷”によく効くように」


千広くんは少し間をおいて、悪いな、と呟いた。


小さな紙袋を受け取った千広くんの表情が、一瞬だけ、切なく歪んだように見えた。