そのまま呆れてどっか行っちゃうんだと思った。
だけど、足音が遠ざかる気配はなく。
「お前の元カレが、お前のこと、 “救いようがないほどのドM"だって言ってた」
「……、」
「その救いようのないドMチャンがどんなもんか興味があった」
「………うん」
わたしの『元カレ』と『秋くん』は、ふたり、特別仲が良いわけじゃないけど、クラスで、いつもワイワイしてる大グループに所属してる。
その大グループのメンバーの彼女になった子の話は、即メンバー間でネタになって、みんなに根掘り葉掘り聞き漁られるんだ。
デートしたとか、キスしたとか、喧嘩したとか、なんでも筒抜け。
キス以上のことなんか、特に盛り上がっちゃうらしくて、プライベートなんて存在しない感じ、で。
「やっぱりわたしも、みんなの話のネタにされてたんだ、」
「ネタってわけじゃねーよ。周りのヤツみんな、けっこー羨ましがってたし。山田うららは、見た目通り従順で、それでいて積極的。うわ、えっろ〜ってな感じで」



